WEAKEND
- 創作コンテスト2012 -

大天使大会から二日後のこと。

ここ、天使の城の庭には、大天使の称号を勝ちとった一人の天使、そしてその大天使と剣を交えている、見習い天使がもう一人。

 

「あの、ジンさんそろそろ疲れてきたんですけど。」

「なに言ってんだ、まだまだこれからだぜ。」

「でも僕、これから入隊試験の勉強があるんですけど。」

 

一年に一度見習い天使が下級天使に進級するために行われる「天使入隊試験」

ラグナも、入隊試験を受ける見習い天使の一人である。

 

「ふーん、まあ頑張れよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「んじゃ、続きやるぞ。」

「え、ええ〜」

 

そう言うと、ジンの剣が再び動き始める。それに、つられるように、ラグナの剣も再び動き始める。

 

「おいおい、この程度かよ。大天使の俺様が、特訓してやってるんだから、試験で落ちるなよ。」

「こんなとこに居たのか、ジン!」

「なんだてめーか、特訓の邪魔するなよ。」

 

緑色の襟の服を着た、側近天使であるサキは、いつものようにジンを注意する。

 

「ラグナをいじめるな、嫌がっているだろう!」

「ばーか、そんなんじゃねーよ。・・・チッ、気分が冷めちまった。」

「ラグナ、続きは今度だ。じゃーな。」

 

そう言うと、ジンはその場から去っていった。

 

・・・・・

 

「ジン、話はまだ終わっていない!」

「なんだよ、まだなにかあるのかよ」

 

ジンを、追うようにについてくるサキは、なにか、頭にきているようであった。

 

「ジン!貴様の行動は、目に余る。大体、任務はどうした、隊員に迷惑がかかるだろう!」

「閃輝隊なら、やめた。」

「な、なんだとぉ!貴様、なにをやってるのだ!」

「大天使は自由だ、別にいいだろ。」

「そういう、問題ではない!それに、エクスカリバーまで持ち出して、一体どういうつもりだ!」

 

「聖剣エクスカリバー」使用者の聖気を吸収する性質や、手にした者に災いをもたらす、という伝承から「魔剣エクスカリバー」とも呼ばれる代物。

かつては、有事の際のみ、使用を許された聖剣である。

 

「持ち出したんじゃねー、許可だって取った。」

「そういう問題ではない!そもそも、その剣は危険すぎる!」

「うっせーな!そんなに文句があんなら、てめーが大天使大会で、優勝すればよかったじゃねーか!」

 

ジンは、苛立ちを見せると、今度こそサキの前から去っていった。

 

それから、少したって・・・

 

「ラオンさん!」

「やあサキちゃん、一体どうしたんだい?」

 

閃輝隊の隊長であり、黄金六天使に数えられる、「閃光のラオン」。それがサキの目の前にいる人物である。

 

「ジンが閃輝隊をやめたって、本当ですか!?」

「ああ、本当だよ。」

 

本人から聞いたことを、疑っていたわけではないが、いざ閃輝隊の隊長から聞くと、現実味が増してくる。

 

「ラオンさん、ジンに大天使を辞退するように、説得してもらえませんか?」

「すまないけど、それは無理だ。ジン君は、大天使を辞退するつもりはないだろう。」

「ウーリの件・・・ですか?」

「それもあるだろうけど、ジン君は昔から、大天使に対して、強い執着心を持っていたからね。大天使の称号を譲る気はないと思うよ。」

「それに、俺は敗者だ。敗者が勝者に口出しする権利はない。闘いって、そういうものだと思うよ。」

「そうですか。」

「まあ、何かあったら、元隊長として、それなりの責任はとるよ。」

 

ラオンは、周囲から「放任主義者」とか「手抜き」と思われがちだが、本当は部下思いの、隊長である。

問題児と呼ばれる、ジンの責任をとるという発言から、それが垣間見える。

 

「ジン君とサキちゃんは昔馴染みだから、色々大変だろうけど、うちの元隊員をよろしく頼むよ。」

「いえ。いきなり、呼び止めたりして、すみませんでした。」

「それじゃーね」

 

 

大天使という、称号を勝ちとったジン=ホリィ。そして、それを取り巻く環境。

これから、どのような出来事と遭遇し、彼は、どのように成長していくのだろうか。

〜fin〜



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