WEAKEND
- 創作コンテスト2012 -

【天使の城 研究科】

 

「…ちょウ。これで良いんですカ?」

「ありがとう借りていくよ。」

「…アノ約束お願いしますヨ。」

「3人程で良いかな?」

「…充分でス。若いのお願いしますヨ。」

 

 

 

【翌日 天使の城 北門前】

 

「隊長。今日休みじゃ無いんですか?」

しかめっ面でハーニがラオンを睨んでる。

「うん。ちょっとね。もしかして予定あった?」

「特には無いですけど…。」

「早くデートしてくれる彼氏見つけなきゃね。」

「隊長それセクハラ。」

 

「で、何処まで行くんだよ?」

不機嫌さを隠さないジン。もっとも彼は普段からこういう表情であるが。

「北外れの公園。」

 

「どうしてその公園なんですか?」

「うん。ちょっとね。そうえばラグナ君に後で謝っといて。」

「えっ!?な、何でですか?」

明らかに動揺してるレミ。

「さっき集合前に会ってたでしょ。悪いことしたなぁ。」

「い、いえ大丈夫です。」

見た目にも分かるくらい赤面している。

 

 

 

【北外れの公園】

 

「遅いっすよぉ!」

ヘッドセットを外しながらやってくるメルティ。

「メルティ!何やってるの?」

「つうかそのデカイの何?」

「これは!…えーと何だっけぇ?」

「研究科が作った仮想戦闘シミュレータだよ。」

「そうそう仮装銭湯シュミレーターだってさぁ!」

 

「…でそのデカイのがシミュレータがどうしたんだよ?」

「今からこれを使って戦闘訓練するよ。」

「はぁっ?」

ジンが露骨に嫌そうな顔をする。

 

「本当に出来るんですか?」

やや不安そうなレミ。

「さっき試して痛くなかったから大丈夫。」

「ほら。そのヘルメット被って。」

やたらと電球が付いてるヘルメットを3人に手渡す。ヘルメットからコードが機械に繋がっている。

 

「3人共付けた?」

「付けましたー。」

「あぁ。」

「はい大丈夫です。」

「じゃあメルティ。システム起動。」

「はいさぁ!」

 

ドンという鈍い音。3人とも目を閉じている。

 

「隊長ぉ。さっき嘘付いたでしょぉ」

「あ、バレた?」

「テストなんかしてないのに酷いなぁ。心配ですよぉ。」

言ってる割にはニヤニヤしている。

 

 

 

【シミュレータ・公園】

 

「あれ?さっきの公園じゃん。」

「失敗ですかね?」

「皆、聞こえてる?」

「隊長。本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。じゃあ今からこの前の任務のおさらいやるから頑張ってね。」

 

「あん?何だよおさらいって。」

「…グゥオオォォ」

「まさかマヌーケドラゴン!?」

「グゥオォォォ!」

マヌーケドラゴンがこちらに向かってくる。

 

「レミ下がって距離を取って!ジンは前衛!」

「この前戦った通りに倒せば大丈夫!ジン、レミいくよ!」

 

ヒュン!ヒュン!

綺麗に弧を描いてドラゴンの額に2つのリングが命中する。

『サンダーボルト!』

小さい雷撃がドラゴンを足止めする。

「おらよ!」

ジンがドラゴンを一振りで片づける。

 

「マヌーケドラゴン戦闘不能。さっすがぁ!」

 

「はん!楽勝だな。」

「お疲れ様。完璧だね。」

「隊長。でもこれで訓練になるんですか?」

「今のは強さ50%だったからね。」

「次はマヌーケドラゴンの100%ですか?」

「次の相手は…俺だよ。」

 

ドンとまた鈍い音。いつの間にかラオンもヘルメットを被っている。

「…ラオン隊長ぉヘルメット似合わねぇっす。」

 

 

 

【シミュレータ・公園2】

 

「隊長と戦うんですか?何%?傷付いたらやだなぁ。」

 

「80%だけどシミュレータだから大丈夫。ほらメルティ。」

「はいはいー。おかしなヘルメット付けてる4人組は全員傷一つついてないピッカピカっすよ。」

「ほらね。」

「でもハーニ。肌かさついてるぅ。」

「マジで!アラバダ産の化粧水のお店、クリアさん詳しかったっけ。」

 

「お喋りはそのへんで、そろそろいくよ。」

 

「ジン、レミ来るよ!」

「作戦はどうすんだ?」

「さっきと同じで絶えず攻撃し続ければ勝機はある!レミ、お願いね。」

「は、はい!」

 

「訓練スタート。」

ラオンの身体の周りが妖しく光る。

 

ヒュン!ヒュン!ヒュン!

キン!キン!キン!

リングが綺麗な弧を描くが槍で振り払われる。

「嘘っ!?」

慌てて予備のリングを取りだす。

 

『スパーキングボール!』

レミが電気を帯びた塊をラオンに投げつける。

『スパーキングボール』

あっさり相殺されてしまう。

「ど、どうしよう…。」

 

「だらしないねぇな」

その間に距離を詰めていたジンが斬りかかる。

右後ろにやや低く剣を構えた姿勢から左へ振り払う。

槍でいなされたものの左上から右下へ振り下ろす。

 

ジンの懐がわずかに空いた瞬間。

「ボルカニックハンド」

拳を脇腹に叩き込み爆発させる。

「ぐっ…。」

そのまま右へ左へ槍を振り払い、致命的なダメージを与える。

 

「ジン!」

「ジンさん!」

 

「ジン=ホリィ戦闘不能により現実世界に強制送還。マジっすか…。」

「くっそ。」

 

『ライトニングフィルド』

『アースシンク』

ラオンの態勢を崩して少しでもダメージを減らそうと魔法を唱える。

「レミ!」

「きゃぁぁぁぁ!」

ジンがやられた事によって防御が充分で無かったレミが電撃に囲まれる。

 

「レミ=テナハ戦闘不能により現実世界に強制送還。ヤバイっすね…。」

「ハーニさん頑張って。」

 

ヒュン!ヒュン!

キン!キン!

リングを投げても跳ね返される。

そうしてる間にも槍が届く距離まで詰められた。

リングを両手に握りしめ近距離戦を余儀なくされる。

 

「はあっ!」

ガキン!

ハーニ決死の打撃も槍に阻まれてしまいリングを落とす。

 

ザシュッ!

そのまま心臓を一突き。

 

(あぁ私…死ぬんだ。)

(クエースの新作鞄欲しかったな…。)

 

 

「ハーニ=ミルトン戦闘不能により現実世界に強制送還。隊長えげつねぇ…。」

 

 

 

【北外れの公園】

 

「お疲れ様っすー。」

「隊長。強すぎ。」

「何も出来なかったですね。」

「ふん。」

 

「お疲れ様。」

ジュースを3人に手渡す。

「あれ?あたしには無しっすか?」

「メルティには裏方のお礼として今夜ご馳走するよ。」

「ナンパっすか!?」

大げさに驚いている。

「そういう訳じゃ無いけど。まぁそういう事にしておくよ。」

「超嬉しいっすけどぉ今夜はティセっちとご飯の約束してるんでお断りっす。」

「それは残念。」

 

「じゃあ負けた3人は罰として明日、研究科の掃除宜しくね。」

「えぇっあの暗くてジメジメしてる研究科の掃除!?」

「何だよそれ。」

「聞いてないですよ。」

 

「騒がしいと思ったらラオンじゃないか。」

「ウーリ。何してたの?」

「息子を遊ばせてた。お前達は何をしてたんだ?」

「研究科の機械を使って戦闘訓練だよ。」

「面白そうだな。良い機会だ、ちょっと俺と訓練しよう。」

「いや、いいよ。息子も居るんだろ?」

「ウーリ隊長。私たちが息子さんを見ておくので思いっきり隊長と訓練して下さい♪」

 

「いやいやいや。さっき魔力使い果たしちゃってさ。」

「隊長ぉ!リアルにする為にダメージ機能を50%にしておいたんで思いっきり戦って下さいっす!」

「ほぅ。痛みがあるくらいが訓練に調度いい。さぁやるぞ。」

「お、おいちょっと待ってくれー!」

 

fin.



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