WEAKEND
- 創作コンテスト2012 -

正義のための反逆
     〜ルーシ編〜

day6/11:11

「『戦場の死神』か、君らしいな」
  ミカを抱えたルーシは、辺りを見渡す。しかし、どの方向にも、枯れた木の姿はあっても、声の主の姿はない。
「誰だ?」
「別に、今は、君やその子を傷つけるつもりはない。安全な場所まで運べばいい」
  声の主の意外な返答に困りながら、疑心暗鬼な顔をしながら、ルーシは本陣の方へと歩いた。
「『戦場の死神』、君に話がある」
「……なんのようだ?」
「彼女を避難させてからでいい。剣を持って、先ほどまでいた場所にきてほしい」
「戦場に剣をもっていかないのは、ただの馬鹿ですよ」
「…待っている」

 

day6/11:35

「……どこだ?」
「来たな、……いや、そっくりだ」
  声の主は姿を表さなかった。だが、彼からはルーシの姿が見えるらしい。
「そっくり?」
「…ルーシ=ミエル。この戦争をどう思う?」
  ルーシには、質問の意味が理解できなかった。彼は、何が知りたいのか?
「何者かが手を引いているとか、そういうことが聞きたいのか?」
「単純に、ルーシの感想が聞きたい」
  口調が少し変わる。剣を強く握る。
「魔族がいるから、天界は今まで攻撃を受けてきた。天界の平和を守るためには、魔族の一掃こそが、唯一の道ですよ」
「今は一方的に攻撃をしているのに?」
  ルーシは、相手が別の所へ移動していると感じた。
「それがどうした?」
「……まぁいい、ルーシ。この戦争を止める気はないのか?」
「何故?」
「この戦争は、天界の平和には繋がらない」
「いや、繋がります。天界の勝利、魔族の殲滅こそ、平和への一歩です」
「……それが、お前の正義か?」
「そうです」
「……それなら、俺の正義とは逆方向のようだ」
「あなたの考え方は、偽善者的なんだ」
  ルーシには、だれが話しかけているのかが、もうわかっていた。
「住処を守るために戦うだけでは、何も守れない」
「天使も魔族も分かり合えば、お互いに暮らせるはずだ」
「それは嘘だ、魔族さえいなければ、全てが片づく」
「そうやって自分達もまた侵略をするんだ、お前たちの言っている魔族のように!!」
「食うか食われるかなんですよ。この戦争のように、偽善者は生き残れません」
「……オックスさんの息子の君なら、そう思ったが」
「俺は親父とは違う。親父とも、あなたとも分かり合えない。
  そのために、剣があるんでしょう?相手しますよ……」
  後ろから風が切れる音、だが、その前にルーシは剣でそれを払った。
「さすが、『戦場の死神』と言われるだけある」
「あなたがいたころの俺とは違うんですよ、アルバートさん。死角からくることくらい、予測しています。」
「俺の名前覚えているとは、うん、素直に嬉しいね」
  襟の色すらわからなくなった天使服を来た眼鏡の男がそこにいた。
「何故城から去ったのか。もし、それが理由なら、俺が切り捨てます」

 2人とも地を蹴り、間合いをとった。

 

day6/11:59



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