(完全な妄想、捏造です
一部残酷な表現があります)
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「かかかかかかか!!
どうした!もっと来い!
どんどんオレに殺されに来い!!」
次々に敵を殴り倒していくヴァルッサ
そして倒れた敵の頭を踏み潰し
鋭利な爪で敵の内臓をえぐる
血飛沫にまみれながら野獣は吠える
「もっとだ!!こんなんじゃ全然足りねぇ!!」
少し離れたところでは水晶を持った女が戦う
「まったく相変わらず不細工な戦い方ですわね。
サウザンドハリケーン。」
魔王九戦士の一人リップは逆にまったく敵を近づけることなく風の魔法で八つ裂きにし、ときに押し潰す
「ははははは!
ヴァルッサ君ではないですがこれは久しぶりに楽しいですわね!」
「くそっ!たった九人に何をしてる!」
敵の魔王が焦るのも無理はなかった
九人の戦士たちが次々に敵軍を肉塊へと変え、血に染まっていく
サタン軍一般兵士たちはその光景を瞬きをも忘れて見つめる
「そろそろだな、合図を出せ。」
ムートの指示で戦場に大きな鐘の音が鳴り響く
それとともに撤退する戦士たち
「まだ足りねぇぞ!」
「また孤児の村でのことを繰り返す気ですの?」
「ちっ・・・!」
駄々をこねるヴァルッサをリップが諭す
戦士達の撤退を目にした敵魔王が叫ぶ
「うん?戦士が撤退しているぞ!!
よし追撃だ!
本隊を含め全軍突撃!!」
最後の二人の撤退とともに三人の男が歩いてくる
敵の進軍に合わせて三人の中の一人が横へ走りだす
「第二軍はあの逃げ出したやつを追え!
あれは噂の魔王八騎士だ!必ず仕留めろ!」
指示通り敵の第二軍は魔王八騎士スピを追っていく
「あのさー、オレだって一応騎士なんだけど。
・・・悪いね恨みはないけどオレも退けないんだ。」
突如地面から生えたあまたの植物が敵軍を縛り始める
そしていくつもの木葉が舞い敵を切り裂く
「手加減はしないよ、オレにだって守りたい物があるんだ。」
そしてもう一人の騎士が動き出す
退却し終えたリップはそれを睨む
「あの方の戦いを見るのは初めてですわね。
このリップを差し置いて騎士へ昇格した力、見せていただきますわ。」
「ピピピ、ピピピ」
「ん・・・。」
スライムを肩に乗せた青年は何かをしゃべるスライムに返事をし、口笛を鳴らす
〔ピーーーーーーーッ〕
その口笛に呼応してものすごい数の魔獣が地中から、森林から、そして空中から現れ敵軍に襲いかかる
「なんだ、この獣は!?」
兵士達は次々に押し寄せる獣の波に呑まれていく
「くそっこのたかがイノッシーがああぁ!!」
イノッシーを倒しとどめをさそうとする敵兵
その敵兵の頭を魔王八騎士タスクが後ろからわしづかみにし持ち上げる
「いじめるな・・・。」
「あが・・・・!」
タスクはそのまま兵士の頭を握り潰す
「ふふふ・・・。
あれだけの獣をしたがえる能力に加えヴァルッサ君以上の身体能力。騎士になるわけですわ・・・。」
リップは軽い寒気に襲われる
一方戦場の様子が映る水晶でその光景を見て笑みをうかべる魔王サタン
「植物に獣か・・・。
まるで我が軍が自然そのものを支配しているような気分だな。」
魔王八騎士フォレスは敵の攻撃をリーヴスコートで防ぎつつ樹属系最強クラスの魔法を唱える
(リムネ・・・全てを終えたとき、君と一緒にいるにはオレはもう血に染まりすぎているかもしれないな)
「魔法は・・・こいつらが使える・・・。」
魔獣たちの魔力がタスクに集まる
「・・・ユグドラシル。」
「モンスターソウル。」
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敵に追われる魔王八騎士スピはあえて敵を振り切らず巨大な洞窟へと入っていく
スピは広い空洞の奥にたどりつきそこで振り返る
「お前達は何も考えず私について来た。
もう負けは必然だ。」
スピの声が反響し空洞に響く
敵の一斉攻撃
大きな音が鳴り響く
だがスピは瞬移を使い一瞬で敵軍の後ろに回り込む
「よく響くだろう?
そう、ここでは音は何倍の力を持つことになる。
最小限の力で勝つには地の利を生かせ。
さようなら、井の中の蛙たちよ。
ディストーション。」
反響により強められた音が生む無数の衝撃波が敵軍を襲う
『ぐああああああああ!』
断末魔がこだまする
「ぐ、まだだぁぁ!!」
生き残った兵士がスピを倒そうと立ち上がったときすでにスピはその場にはいなかった
あれほどの衝撃をこんな洞窟が耐え切れるはずがない
崩れ落ちる洞窟
「くそおおぉぉぉぉ!!」
もうスピには生き残りの断末魔は聞こえなかった
「勝つ戦いしかしない、基本だな。」
スピはズレたサングラスを直し城へと戻っていく
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「だ、第二軍からの連絡が途絶えました!」
「何だと!?」
「か、重ねて報告します!
四方に別れていた各軍も八騎士と名乗るものたちにより壊滅状態です!」
「・・・・・・!」
言葉を失う敵魔王
それはサタン軍一般兵士も同じであった
彼らは自分たちの上に立つ者たちの恐ろしさを思い知る
彼らの気分一つで自分たちの命が簡単に失われることも
しかし同時にある確信による高揚感もあらわれ始める
混乱にさいなまれる敵本軍
そのとき氷河期に迷い込んだかのような寒気が敵本軍を襲う
いつのまにか獣も植物も姿を消していた
「弱いくせに数だけそろえちゃって。
そういうのムカつくんだよね。
・・・早く死んじゃえ。」
魔王八騎士ユイ
彼女の周りは全て凍り付く
武器も攻撃も
炎の魔法も
命の時も
凍りの悪魔は笑う
ただの少女のような純粋な目で、凍りついた自分以外の存在を見つめながら
そしてさらなる氷の世界へと敵を誘う
「アプソリュードゼロ。」
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戦いに終わりが近づいた
騎士と戦士によりほぼ壊滅状態の敵魔王軍
そんなとき戦場の空気が重みを増す
銀髪の魔王が城壁に現れたのだ
戦いの中にも関わらずその男の圧倒的な存在感に誰もが動きを止め息をのむ
しばらく続いた沈黙をやぶり敵魔王が声を枯らして叫ぶ
「魔法弾を用意しろ!!
標的は魔王サタンだ!
くらえサタン・・・数百人分の魔力を込めた最終兵器だああああぁぁぁぁ!!」
高密度の魔力の塊が魔王サタンに向かって放たれる
しかし誰一人サタン軍で焦る者はいなかった
サタンの隣にいた男が魔力で巨大な盾を作り、いとも簡単に魔法弾を弾き返した
皮肉にも敵軍起死回生をかけた一撃は自分達にとどめをさすことなった
と
「さすが魔王の盾と呼ばれるだけあるな。」
魔王の盾と呼ばれた男は黙って頭を下げる
「どうだ、オレの部下達は素晴らしいだろう?
弱き者たちよ、貴様らにこの魔界を生き残るたった一つの方法を教えてやろう。
オレの下につけ。
武器を捨て降伏しろ。」
圧倒的威圧感
力が抜けたように座りこむ敵兵士たち
次々に手錠をかけられ城内へと連行されていく
戦いは終結した
「あれ〜?ムート君は〜?
せっかく褒めてもらおうと思ったのに〜。」
「最後の仕上げですよ。」
自分の戦いから帰ってきたスピが答える
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一人の男が戦場から逃げ出し走っている
その男は魔王と名乗った男
だが部下は誰一人残っておらずただ一人で逃げる
「どこへ行く?」
その男の背後から地獄から響くような冷たい声が聞こえる
その声の主は金髪の男
魔王の剣と呼ばれている男
「き、貴様は・・・!」
魔王は顔を青ざめる
「仮にも魔王を名乗る者が部下を捨て一人逃亡か。
こっけいだな。」
「だ、だまれ!!」
魔王のありったけの力を込めた魔法
しかし魔王の剣ムートはそれをいとも簡単に片手でかき消す
「愚かな魔王よ、生まれ変わっても我らに逆らえないように・・・。
恐怖と絶望を来世にまで刻んでやろう。」
魔王の腕を掴みむしり取るムート
「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
悲痛な叫びが響く
「な、何なんだ・・・。
いったいお前たちは何なんだぁぁ!?」
「知っているだろう?
我らは魔王サタン軍、この魔界を統べる者達だ。」
冷たい光が魔王を包む
そして魔王に闇が訪れる
魔王が自分に何が起きたのかを理解するときには彼の存在はすでにこの世から消えていた
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銀髪の魔王サタンは一般兵士に問い掛ける
「お前たちの上に立つ者たちがどれほどの存在か理解したか?
恐ろしいだろう。
しかしお前たちにはそれ以上に湧き出る感情があるはずだ。」
そう兵士たちには確信があった
二側近も、騎士も戦士もいるこの軍が負けるはずがないと
魔界を支配できないはずがないと
「そしてお前らもこの軍の一部だと理解しろ。
さぁオレに聞かせてくれ。
魔界最強の我が軍の雄叫びを!!」
彼らの高揚感はピークをむかえた
『うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!』
一斉に叫ぶ魔王サタン軍
魔界最強の軍にふさわしい兵士たちが誕生した瞬間だった
少し離れたところでこの雄叫びを聞くムート
彼にも確信があった
「我らのゆくてを阻む者など存在しな・・・っ!」
そのとき彼の脳裏に直感的にある記憶がうかぶ
燃え盛る炎の中
赤髪をなびかせ
無精髭をたくわえ
かつて彼と互角に戦った男
そしてその男とともにいた圧倒的な力の差でも決して生をあきらめなかった者達
(ふっ、まさかな・・・)
彼は追憶を振り切り主君の元へと帰っていく
後に圧倒的な力で魔界を支配したサタン軍
魔界の誰もが抗うことをあきらめる
そんな彼らに天使を引き連れ戦いを挑む数人の魔族がいた
それは遠い未来の話
もしかしたらの未来の話
〜魔界を統べる者達〜